RYUJI NAGATA
東京オリンピック・パラリンピックのレガシーが残したものとは
東京2020オリンピック・パラリンピックのレガシーとは、世界一大規模のスポーツ競技大会終了後、将来に渡り開催地に影響する物質的・精神的価値を表現する言葉として使われています。しかし、閉会から1年半が経過した今振り返えると、新国立競技場のデザインコンペのやり直しにはじまり、エンブレム盗作問題、コロナ禍による延期・無観客開催、最近では、五輪組織委員会元理事の汚職事件や、テストイベントを受託した広告代理店の談合などが頻繁に報道されており、負のイメージが目立った大会との印象をみなさんはお持ちではないでしょうか。
この記事では、東京2020オリンピック・パラリンピックのレガシーについて、前回の東京1964大会との比較や筆者の東京2020大会競技スタッフとしての体験談を交えながら、レガシーの精神的価値にフォーカスして、我々の未来の生活にどのような好影響を残したのか、筆者独自の目線で検証してみたいと思います。
この記事の目次

東京1964オリンピック・パラリンピックが残したレガシー
筆者がまだ生まれていない1964年に開催された前回の東京オリンピック・パラリンピック大会。スポーツクラブはまだ日本には1件もなかった時代。戦後の高度成長に陰りが生じ、所得倍増計画の実現も怪しくなった日本経済の特効薬として、「オリンピック開催」を利用した当時の政権。大会に合わせて国家予算の1/3を投じて建設された東海道新幹線や首都高速道路などを開通させ、旅行需要やテレビの購入などの消費が増加し、日本経済にオリンピック景気といわれる好景気をもたらしました。
現セントラルスポーツ株式会社代表取締役会長の後藤忠夫さんは、競泳で東京大会に出場後、選手を引退。普通のサラリーマン生活に戻るも、ご自身の戦績や日本と世界の力の差に悶々とする生活の中、大学水泳部の恩師が大会会場だった国立代々木競技場のサブプールでポケットマネーで子供達の入場料を払って水泳指導をしていることを知り、見学に行ったことから、後藤さんはご自身のミッションに目覚めたそうです。
世界で通用する選手育成に繋げるには、もっと多くの子どもたちにスポーツを通じて心身ともに健康になってもらうことこそが、自分がやるべきことだ。
後藤さんは、東京オリンピックから5年後の1969年、既に体操教室をはじめていた東京オリンピック体操メダリストの小野喬・清子夫妻や遠藤幸雄さんと共に、セントラルスポーツクラブを創業。最初は自社施設を持っていなかったため、杉並区の高校の体育館とプールを借用して運動指導を開始。生徒の募集はワラ半紙で作ったチラシだったといいます。
現在、民営のスポーツクラブ・フィットネスクラブは日本全国におよそ5000軒あるといわれています。筆者が所属する神奈川県水泳連盟の登録のスイミングスクールだけでも200軒以上あります。後藤さんのセントラルスポーツ創業の想いに代表されるように、日本のスポーツクラブ・フィットネスクラブは、東京1964オリンピックを契機にはじまったといっても過言ではありません。筆者はこれこそが前回の東京1964オリンピックが残した最も貴重なレガシーの一つだと思います。
確かに1964年の日本にとっては、オリンピック開催を契機に、先進国の仲間入りするのに必要な国際都市としての社会インフラを整えたことは、その後の日本や日本人にとっての大きなレガシーであったことは間違いはありません。しかし、レガシーを語る上では、インフラや経済効果などの物質的な価値に加えて、無形の文化や習慣のように社会やライフスタイルがより良い方向に変わるために必要な「精神的」な部分にフォーカスするのが最も重要ではないかと筆者は思います。

2020東京オリンピック・パラリンピックが残したレガシー
東京都は、2020東京オリンピック・パラリンピックのレガシーを見据えた取り組みをホームページで紹介しています。
前回1964の東京大会では、東海道新幹線、首都高速道路、羽田空港を結ぶ東京モノレール、東京・名古屋・大阪地下鉄などのインフラ整備が行われましたが、現代の東京や日本に不足しているインフラはありません。競技場も必要最低限なものだけを建設するといった計画として、「お金をかけない」コンパクトな大会をアピールしてきました。
大会招致時点の2013年に示した大会経費7340億円に対して、大会後の報告では1. 4兆円とも2. 5兆円とも取れる玉虫色の報告がありました。一方で、32兆円と強気に掲げた経済効果については、コロナ禍による開催延期や無観客試合が仇となり、大会終了後までの経済効果の試算は、民間のシンクタンクから6兆円とのリポートが公開され、都の予想を大きく下回る結果となっています。大会終了時点の東京都からの経済効果に関する報告はありませんが、マスコミの報道は、五輪組織委員会元理事の汚職事件や下請け業者の談合などの不正事件にばかり矛先が向けられている状況から見ると、国や東京都の単年度の収支としての帳尻はかろうじて合わすことができ、財政についての説明責任は果たしたとの解釈ができます。
では、開催後、長期に渡り影響するレガシーについてはどうなのでしょうか?
物質的なレガシーとしては、新国立競技場、東京アクアティックセンター、有明アリーナなどの新設した競技場の想定する収入から施設の維持管理費を差し引いた赤字額として、毎年、国から24億円、東京都から7.3億円が支出されることになっています。コンパクトな大会を目指していたのにも関わらず、結局のところ多大な負の遺産を残した結果です。
2022年6月30日、東京2020オリンピック・パラリンピック組織委員会が解散した日の最終報告書の中で橋本聖子会長は、
東京2020大会のレガシーの一つは人だと思う。この先の豊かな人生の実現とスポーツを通した社会貢献に一層の理解と協力を願っている。
と、記載。この日報告された内容や、冒頭で紹介した東京都のホームページからも読み取れるように、今大会のレガシーについては、これまで以上に、社会や暮らしがより良い方向に進むために必要な「精神的な価値」を重視する傾向が鮮明になったといえます。

東京2020パラリンピック水泳競技運営に従事しての考察
筆者は、2021年8月19日から9月4日までの16日間、東京アクアティックセンターで行われた東京2020パラリンピック水泳競技運営スタッフとして従事しました。
はじめにお断りさていただきますが、正直なところ、この16日間の体験は、今振り帰ってもとても複雑な心境です。ただし、筆者は、日本パラ水泳連盟の技術委員会会員としての立場もありますので、連盟のイメージに傷がつくことがないよう細心の注意を払って述べます。
これまでの人生の中で一番過酷な16日間でした。
有明のホテルに16日間缶詰状態。コロナ対策として、選手と接するスタッフは大会期間中ホテルと競技場をバブル状態として、送り迎えは専用のバスを運行していました。
1日のスケジュールはホテルを朝6時ごろにバスに乗り込み出発。ホテルに帰るバスに乗るのは21時とか22時頃。支給されたユニフォームのポロシャツ3着とパンツ2着がありますが、毎日の着用で汗だくになり、そもそも16日分の下着を持って行くこともできないため、ほぼ毎日ホテルのバスルームで洗濯をします。毎晩就寝できるのは夜中の1時頃だったと記憶しています。
1日の3食を競技場でいただきますが、これまでに食べたことがない質素で冷凍食品を解凍したようなお弁当で、期間中4パターンが、毎食順々に出せれる地獄のループ状況。途中から完全に便通事情が崩壊しましたが、舌に合わないからといって、他に食べられる物も場所もなくどうすることもできずとても苦しみました。
16日間を通して半日の休みが1回のみで、もちろんホテルから出ることは許されません。帰宅や職場に行くこともできませんでした。
ホテル宿泊費、シャルトルバス、食事は五輪組織委員会が支給。
16日間の勤務に対する報酬はありません。通年を通してほぼ毎週末、水泳競技会運営に携わっている筆者もこれには驚愕しました。
無論、全てを犠牲にしてこの一瞬に捧げる選手達を一番近いところで支えることができ、レース結果に一喜一憂する。表彰式で君が代が流れる瞬間に立ち会えた喜びは、お金には変えられないとても大きな価値を感じました。だからこそ、我々競技会を運営する現場スタッフは、無報酬だろうが、食事が喉を通らなかろうが、誠心誠意、身を粉にして働くのです。
大会が終わり帰宅したときには、身も心も疲れ果て、通常の生活や仕事に戻るまでには3、4日を要しました。
この大会運営の予算配分を決めるのは公務員として扱われている五輪組織委員です。五輪組織委員には給与が支給されます。この人達の金銭感覚がl狂っているのか、競技会運営に対する理解不足なのか、それともこれが現在問題になっている汚職や談合の一因なのかは分かりませんが、
労働基準法に最低賃金や連続する勤務時間や日数の定めがある国、日本で行われるスポーツの国家プロジェクトであって、我々のような労働を伴うスポーツボランティの労働に対する配慮が一切なく、また誰も意識すらしていない風土が何よりも情けなく感じます。
企業経営では、まず人件費を決めます。それは人の労働力無くして商行為は持続できないからに他ありません。スポーツ競技の現場も同じです。競技会を運営するには相応の人手が必要不可欠です。しかし、多くの競技会では収入も少ないため少ない予算で運営せざるを得ません。そのため働くスタッフに賃金を支払うことができません。スポーツ競技会運営の多くは、その競技団体に所属するボランティアの寛大なる理解と尽力により支えられているのが実情です。
一方で、オリンピック・パラリンピックは、我々のような国内の競技会を日頃から運営しているNF所属の競技役員を集めて運営を行うのですが、世界で一番お金を稼ぐスポーツイベントであるオリンピック・パラリンピックが、その日頃の我々の活動よりも、劣悪な環境や待遇でスタッフを16日間も拘束するのは、もはや悪ノリ、悪用と受け取らざるを得ません。
会場として新設された東京アクアティックセンターの建設費は567億円です。その費用のわずか1%を削減するだけでも5.67億円が確保できます。競技会運営のボランティアの人件費に充てる予算がないことなど、まずないといえます。
成熟社会におけるスポーツレガシーの目指すべき方向性
2022年11月末、ワールドカップサッカーでサムライブルーのドイツとスペイン戦に勝利したジャイアントキリングに日本中が沸きました。
世界規模のスポーツ大会が注目される理由には、やはり多くの国民が母国、「日本国民」を意識する機会であり、またスポーツが持つ力を多くの人が改めて実感し共有する機会だからではないでしょうか。
スポーツの持つ力とは、選手の活躍や戦う姿を見る人の心を動かし、生活の励みにし、人生や社会をより良い方向に導く大きな力にあると筆者は思います。
監督森保一監督や日本代表選手が帰国後のインタービューでは、
選手、スタッフ、サポーター、国民みんさんとの共闘の結果、勝利できた。今回の我々のサッカーを見た子供達が、サッカーに興味を持ち、将来ワールドカップで活躍したいと思ってくれたら嬉しい。
という趣旨のコメントが印象的でした。
東京2020オリンピック・パラリンピック組織委員会が、今大会のレガシーの一つが「人」であるとまとめた理由には、スポーツの中心は常に「人」であり、スポーツの価値は、人から人へのポジティブな影響、社会的効果をもたらすことに他ならない。逆に言えば、「施設」や「インフラ」などはスポーツの中心にあるべきものではないとも言えます。
インフラも施設も充実した成熟した日本で開催した東京2020オリンピック・パラリンピック大会の予算をもっと「人」への投資に充てていたなら、もっと具体的で、国民の理解が深まるレガシーが残せたのではないかと筆者は思いました。
おすすめの朝活を紹介
ここからは、トップスイマーとして学生時代6年半をアメリカで過ごし、約半世紀に渡り日本のフィットネス史と共に歩できた筆者が、スポーツ朝活を通して健康習慣が持続するまちづくりを進める目的で公開した、スポカツ.net を紹介します。
スポーツは人が中心であり、施設や環境ではないのです。しかしながら、近年急増している24時間営業のフィットネジムにしろ、全国で展開している大手のコ◯ミ、セ◯ト◯ル、ル◯ネ◯ン◯にしろ、公共のスポーツ施設にしろ、指導者が対応している時間帯に大差はありません。有人営業の開始時間は9時や10時が一般的です。
実は、筆者が競泳選手として朝練を始めた1980年代初頭の日本では、多くの民間のスイミングスクールで選手限定の朝練が行われていました。今、改めて振り返ってると、朝練担当コーチの勤務体系は悲惨なものでした。
早朝6時前には出勤して、6時から選手の指導。終わると日中は通常業務。18時頃から再び選手を指導して、おそらく退社できるのは21時でしょうか!?
これは実に1日16時間労働です!!
参考までに、筆者を指導してくれた恩師は、ずーとプールに住み込み状態でした。本当に頭が下がる思いです。(涙)
労働基準法で定める労働時間は、1日8時間、週40時間です。
労働基準法遵守の流れが、フィットネス業界にも波及した結果、以前選手の朝練をしていた一般の民間クラブはほぼ消滅しました。
つまり、現代の24時間営業のフィットネスクラブや総合フィットネスクラブの経営者、公共施設の指定管理者など、インストラクターを雇用する立場として、早朝からインストラクターを勤務させることが法令的にも物理的にも極めて困難な時代となっています。
では、なぜアメリカのフィットネスクラブは早朝から有人営業できるのでしょうか? アメリカには労働基準法がないのでしょうか!?
無論、アメリカにも労働時間は週40時間までという日本とほぼ同等の基準があります。
ただし、一般的なアメリカのフィットネスクラブのインストラクターは、アルバイト学生やWワーク、トリプルワーク、フリーのインストラクターの方々が多い印象です。
アメリカのフィットネスクラブのインストラクーは、早朝はフィットネスクラブで会員を指導しながら、自分も一緒にワークアウトで汗を流す。9時以降は、学校へ、本業へ(体育教師、消防士、スポーツショップ店員、理学療法士、スポーツトレーナー、コンピュータープログラマー・・・など)といった感じで、フィトネスインストラクターやスポーツコーチは、趣味と実益を兼ねた副業として非常に人気が高い職業なのです。
実は、日本でも、このアメリカンスタイルの副業コーチを活用して、早朝フィットネス、スポーツ朝活を主催している団体があります。そう、筆者もこの団体の所属コーチとして、早朝から水泳指導をしています。 以下、スポカツ.net の原点となった「オーシャンナビ」を紹介します。
名称 | オーシャンナビ |
HP - URL | |
主催 | 株式会社オーシャンナビ 代表取締役 守谷雅之 |
サービス内容 | オーシャンスイム、マスターズスイミング、トライアスロンなど泳ぐことに特化した練習会を、東京、神奈川、千葉県内のフィットネスクラブや海などで開催している。過去10年間で累計会員数は4000人以上。会員の最高齢は87歳。 |
オーシャンナビのビジネスモデルは、プール施設と従業員コーチを持たないジプシースタイルのスイミングスクールです。
フィットネスクラブの早朝のプールを借上、オーシャンナビの会員向けに水泳練習会を運営。指導するコーチは筆者を含め20人以上の登録がありますが、みなさん日中は全く別の仕事をしている副業コーチが指導にあたります。
筆者が主に担当する東京都町田会場は、月、木、土、日曜日の早朝に練習会スタイルの朝活を実施しており、1回20人程度の参加者がい
みなさまと共創したい朝活があるまちづくり
誰もが無理なくスポーツ朝活に取り組める地域環境の実現です。
■日本全国に約5000軒ある会員制フィットネスクラブは、約424万人の様々な運動ニーズを支えてきました。しかし、アメリカの5.6人に一人に対して日本は30人に一人。1年で9割が退会 。
■オーシャンナビは、これまでに、東京・神奈川・千葉の累計4000人以上の運動習慣をスポーツ朝活で支えてきました。しかし、他の地域、水泳以外の運動種目の展開は困難。
上記、二つの課題を解決する目的で誕生したのがスポカツ.net です。
【主催者向け】
総合フィットネスクラブ、24時間営業のフィットネスクラブ、ヨガスタジオ、ダンススタジオ、レンタルスペース、会議室、集会場、公共施設、公園、学校、朝活として運動エクセサイズに利用できるスペースは無限大です。
是非、スポカツ.net で朝活を実施してください。現状収益ゼロの空間や時間に運動レッスを開催して収益化が可能。ほぼノーリスクです。
【コーチ向け】
日本人が運動習慣を持続するモチベーションは施設にはありません。参加者の動機や目標に導くのは、みなさまのような、ヨガインストラクター、ピラティスインストラクター、フィットネスインストラクター、ランニングコーチ、スイミングコーチ、・・・などなど、その道の指導者の方々に他なりません。
現在の本業は一切関係ありません、スポカツ.net で朝活を指導することで趣味と実益を兼ねた最高の副業・アルバイト、自分自身の理想の朝活環境が手に入ります。
【参加者向け】
スポカツ.net に月額会員という料金設定や無料体験はありません。ネットサイトなので内容はガラス張りです。納得がいくまで、お気にりが見つかるまで色々比較してください。参加1回毎デジタルチケットを購入します。(金額は主催者が決定:無料、もしくは330〜33,000円。)もし、推しのコーチが見つかったら、ぜひ足繁く通うよにしましょう。通う励みが、あなたの朝活習慣を定直化させます。
誰もが楽しめる地域のスポーツ朝活の環境づくりは、
みさまとの共創により実現します。
ぜひご一緒に盛り上げて参りましょう。
ここまでお読みいただきまして誠にありがとうございました。
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